勇者に従え!

「吸魂虫かあ‥」

帰り道、勇者はメディカから受け取った塗りグスリと、それから彼女の好意で分けてもらった『吸魂虫が寄ってこない香り』のする小袋を持って歩いていた。

帰り道とは言ったが、実際にどこかに帰れる場所がある訳ではない勇者。

「これからどうしようかなぁ‥」

とにかく、自分には情報が足りない。

村の中でしか生活した事がないものだから、本を読んで学んだ知識ぐらいしか頼れるものがないのだ。

「まずは‥そう、資金稼ぎかつ、情報収拾だな」

だったら、人々が気楽に雑多な話しをしている場所がいい。
ついでに勇者としての仕事も出来るような場所。

たとえば‥。
たとえばだけど‥。

ふいに足を止めて視線を上に向ける。

大きな木の看板には何やらゴシック調のアルファベットで文字が書かれている。
おそらく、意味はこうだ。

「__世界の酒場。」

これは巡り会わせというヤツだろうか。

働きながら情報収拾、裏情報もゲット出来るとなれば、やはり酒場以上に最適な場所はない。

「決めた、ここで働かしてもらう!」

大きなマホガニー材で出来た木製のドアを開いて中に入れば、チャリンチャリンと軽やかな鈴の音が響いた。

〈セーブデータ:二日目/世界の酒場前〉

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