優しい旋律
がたん。


何かにぶつかってしまったようだった。


一瞬にして、部屋中に静寂が響き渡る。


「・・・!?」


彼女は慌てて部室に背を向け、その場から一刻も早く逃げようとした。


しかし。


「待ちなさい」


呼び止める声が聞こえる。


彼女は、恐る恐る後ろを振り向いた。


しかし、その声はいつも聞く、あの冷たい声ではなかった。


それはどこか、暖かく、優しい声。


そう、まるであのピアノの音色のように。


かたん、とピアノの蓋が閉められた。


「こんな時間に練習か?」


彼が彼女に近づいてくる。


彼女は慌てて言ったが、言葉が見つからず、口ごもってしまった。


「いえ、その・・・」










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