ちいさいものがたり《仮》

初めての会話があまりにも印象強くてわたしはしばらく創君を眺めることしかできませんでした
ホームルームで行われた自己紹介で創君の名前は分かったものの声をかける勇気はありません

創君はいつも一人でした
明るい茶髪は無造作にセットされているしいつもどことなく制服をおしゃれに着こなしていて全然暗いイメージなどはないのに
創君はやっぱり一人で過ごしていました

女子の間ではたまに話題にのぼることもあるけれど話しかけようとはせず男子もやはり仲間に入れようとはしないのでした
なぜだろう?
わたしは創君を見つけるたび疑問に思いました

「あー、創君?」

わたしはそのころ仲良くなった友達の一人に聞いてみることにしました

「創君はねー、あ、わたしまえ同じ学校だったんだけど、昔はすっごく明るかったんだよー?」

「明るかった?」

「うん。あんな変に声かけづらい雰囲気じゃなくて、なんというかー…クラスの中心にいるような感じ」

「へぇー」

「でも、この前…1年くらい前だったかなー?創君結構長く休んだ時があってー。理由を詳しく知ってる人がいないんだけど、とにかくそれで休んだあとからあんな感じになっちゃったんだー…」

結構噂がいろいろあったらしいのです
親が離婚したとか、いじめがあったとか、虐待されていたとか
昔の創君を知っている人たちはそれを信じようとはしませんでした
でも彼が学校に再び通うようになってからは何かあったとしか思えなくなってしまったのです
結局創君は何を聞かれても誰にも答えませんでした
理由は不明。そのまま創君は一人で過ごすようになったのです
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