ちいさいものがたり《仮》
「なんか用事ある?」
創君に聞かれてわたしが首を横に振ると彼はほほ笑みながら言いました
「ジュースおごってあげる。暑いしどっかお店に行こう」
「あ、ありがとう」
創君はなんでこんなにわたしに話しかけてくれるんだろう
クラスではあんなに一人ぼっちでいるのに、一人の方が楽だと言っていたのに、なんでだろう
創君の中でわたしは特別なのかな
…まさか、そんな訳ないよ!
だって同じクラスなのに話せることはときどきしかないし
ていうか教室の中で話したのは4月の時だけだし
わたし思い上がってるんだ
でもやっぱり嬉しくてわたしはドキドキしながら創君の背中を追って行きました
お店に入ると創君はオレンジジュースを頼みわたしはアイスティーを頼みました
「オレンジジュースって子供みたい」
「おいしいからいいんだよ」
そういって創君は一気にジュースを飲みほしました
「創君ってさ、いつも本読んでるけど友達とかと遊ばないの?」
「友達とは…最近は遊んでないなぁ…いつも本屋で暇つぶしてるか家でごろ寝してる」
「へぇー。話したりもしないの?」
「話しかけてくれないから…ま、いっかって。俺に話しかけてくるのって女子ばっかり。女友達はいらないから」
わたしは内心おどおどしながら質問しました
「わ、わたしは…?」
「えっ?前田さん?前田さんは…」
「友達、かな?なんか…聞かれると困るなー。なんて言えばいいんだろ」
ちょっとだけ困った顔をして創君は答えました
「なんかね、妹に似てるんだ。前田さん」