狙われし王女と秘密の騎士
第一章

逃亡する姫君



全てが寝静まった真夜中。
それは突然、起こったーーーー

人々の叫び声が城内に響き渡る。
激しい怒号で私はハッと目を覚ます。
耳を澄ませなくても、扉の外から剣の交わる音が聞こえてくる。
争う声、うめき声がしていた。


いったい何が起きたのか。
何もわからず、ただベッドの上で身を固くじっとしていた。

その時、バタンと部屋が勢いよく開き、ひとりの女性が挨拶もそこそこに入ってきた。
飛び込むように部屋の中に入ってきたのは長年私の側に仕えている侍女のルカだ。


「姫様!シュカ姫様!」
「ルカ!どうしたと言うの!?これは一体!?」


ルカは困惑する私の両腕をギュッと掴む。
その手は小さく震えていた。
ただ事ではない。
とても危険なことが起きている。それだけははっきりわかっていた。


「シュカ姫様、敵襲でございます。隣国のサルドア国が攻めてまいりました。今すぐお逃げください!」
「サルドアが!?協定を結んだのではなかったの!?お父様が戦争は終わったと……」
「裏切られたのです」

裏切られた!?
そんな……。うそでしょう?
やっと戦が終わり、平和が来ると思っていたのに。


「とにかく、早くこれに着替えてくださいまし」


渡されたのはルカの服。
ドレス姿では身分がばれてしまう。城に仕えている者の服で逃げた方がまだ安全である。
私は素早くそれに着替えた。




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