狙われし王女と秘密の騎士
その初めて見る顔に青くなる。
本気で怒っている。
それだけで自分の仕出かしてしまったことの大きさを実感した。
「あの……」
「どういうつもりだ」
カイルは低い声で、気持ちを押さえるように私に聞いた。
その迫力に私は黙ってしまう。
勢いであんなことをしてしまったが、カイルの怒りでどれだけ無謀なことをしたかよくわかった。
この場から逃げたい気持ちに駆られたが、それは壁に手をついたカイルの腕に囲まれ無理な話だった
「ごめん……」
「エルシール国王はここにはいない。無謀だと言ったはずだ」
「はい……」
「噂を広めることで、反乱軍を潰そうと企んでいるだけだ。もとから仕組まれていた。ここに王はいないんだ」
「そんな…」
お父様はいない。絶望的な気持ちになったが、反面、それはわかっていた気がする。
どこかで認めたくなくて、少しの可能性にも掛けたい気持ちがあった。
でもそれは気持ちだけで、実際乗り込んだらどうなるかなんて考えもしなかったのだ。
短絡的な行動だった。
「お前、下手したら殺されていたぞ」
「……分かってる」
短絡的すぎたと認めたくもなくて、ついそんな強がりが口から出るとカイルは壁をドンっと叩いた。
「わかってねぇよっ!」
カイルの鋭い声にハッと顔を上げる。
真っ直ぐな瞳が私を見ていた。