狙われし王女と秘密の騎士
それは旅人
瞳の裏がチカチカと眩しくて目が覚める。
ゆっくり目を明けると、昨日とはうって変わっていつの間にか太陽が昇っていた。
「朝……」
あれからこの物陰に身を隠したまま、眠ってしまったようだった。
いつもはフカフカのベッドで寝ていた。草が生えているとはいえ、こんな所で寝るなんて当然ながら生まれて初めてのことだ。
軋む体を擦りながら、ゆっくりと体を起こすと
、普段とは違うその身軽さに驚く。
服装ではない。
そっと頭に触れると、昨日まであった場所に髪の毛はなかった。
「髪を切っただけでこんなに違うなんて……」
さっぱりと短くなった髪の毛を触る。
実は昨日、腰まであった髪の毛を短剣でバッサリと切り落としたのだ。
少し名残惜しかったが、長い髪のままだと正体がばれる可能性があったし、何より短い方が動きやすい。
これで少しは違うだろう。
しかし、短くしたことないから何だか変な感じがした。
「ああ、そうだ。服も変えなきゃ」
不思議なことに髪を切ったことで少し表に出る自信がついた気がする。
それにスカートはやっぱり動きにくいし、王宮の使用人の服だと気がつかれる。
全て変えた方が良いと思った。
資金は服のポケットにいくらか入っていた。たぶんルカが事前に入れておいてくれたのだと思う。
金額にしたら、数日は困らないくらい入っていた。
隠れていた所から街の中心街はすぐ側だった。そこは食べ物屋だけでなく、服や雑貨類の店もある。
街の人の服を参考に、適当に安い物を購入した。
「ズボンなんて、初めて履いたわ」
なんだか着慣れなくて落ち着かない。
でも、なんだか気分は悪くなかった。
しばらく街の中を歩いていると、八百屋のおじさんに声をかけられた。
「お、少年。見馴れねぇ顔だ。旅の者かい?良かったらこれ買ってかないかい?」
「少年…?」
少年って言った?
おじさんの言葉に驚いて足を止める。
明らかに私を見ていて、おじさんの言葉が私に向けられたものだと気がついた。