狙われし王女と秘密の騎士
姫君と戦
いい香の浴槽にゆったり浸かる。
こんな広いお風呂に浸かるなんてどのくらいぶりだろう。湯浴びにすっかり慣れてしまっていた。
湯船に浮かぶ花びらをすくう。それは穏やかな時間で、何もかもを忘れそうになる。
用意された服も肌触りがよく、滑らかだ。
そうだった。私はいつもこんな生地の服を着ていたのだ。
今となってはどれだけ自分が贅沢で恵まれていたかよくわかる。いくら王族とはいえ、それを忘れてはいけないのだ。
「御召し物は如何ですか?」
されるがままに服を着せられ、その出来上がりに侍女が満足そうに微笑みながら聞いた。
「とてもいいです。ありがとう」
「お気に召して良かったですわ。姫様はお美しいから何でもお似合いになります」
素直にお礼を言うと侍女は照れたように微笑みながら誉めてくれた。
身に纏ったのは女性物の揺ったりとしたシルエットのズボンである。
裾がふんわりとしているため、スカートの様な感覚にもなるがこちらのほうが動きやすい。
自国は女性がズボンを履くなんて滅多にないため、こういったシルエットのズボンは今後も我が国で流行らせたいと思う。
仕事をもつ女性に需要がありそうだ。
「しかし、本当にドレスでなくてよろしいのですか?」
この服に満足していると心配げに侍女が聞いた。それに深く頷く。
「これから先に起こることを考えると優雅になんて居られないから」
呟いた時、部屋の扉をノックされた。
返事をすると入ってきたのは意外にもディル王子だった。