狙われし王女と秘密の騎士
「こっちだ」
突然、見知らぬ男に腕を掴まれ、そのまま走りだし裏路地へと引っ張りこまれる。
突然のことで混乱したまま、私は連れられるままひたすら走った。
人混みを掻き分け、かなり走った所で男は足を止めてこちらを振り返った。
「ここまで来れば大丈夫だろう」
く、苦しい……。
こんなに走ったのは初めてだ。
ゼーハーと膝に手をついて肩で息をしながら男を見上げる。
男は息を乱さず、澄ました顔でこちらを見ていた。
若い男だ。
「何をするの!」
「それはこっちのセリフだ。お前、何したかわかってんのか!?」
呆れたような目線で私を見下ろしてくる。
私は目をそらし唇を噛んだ。
「わかってる。身体が勝手に動いた……」
そう。大変なことになるとわかってた。どうなっても良いと。
その半面、半分無意識に体が動き、起こした行動だった。
「逃げなきゃ捕まってたぜ?」
確かにあのままあそこにいたら確実に捕まっていただろう。