狙われし王女と秘密の騎士
それからカイルは昨晩考えたという策を深く話して聞かせてくれた。
それは戦の経験のない私からは想像できないが、しかしここまでのことを考えてしまうなんて単純にカイルは本当に凄いと思う。
「カイル。私も一緒に行かせて」
私も一緒にエルシールへ向かうと告げると、カイルは想像していたのか思ったより驚かなかった。
しかし当然ながら首は縦にふらない。
「危険だ。お前が思っている以上に戦場は危険しかない。命がかかっているんだぞ。一歩間違えれば死んでしまう。ましてや戦の経験のないお前を連れていくのは無謀だ」
睨むように私をじっと見つめてくる。
しかしそれに怯むことなく私も見つめ返した。
わかっている。いや、わかっていないのかもしれない。戦場へ出たことなんてないのだから、いくらわかっていると言ってもそれは想像でしか図れない。
でも、やはり自分だけじっと待つことなんて出来なかった。
ましてや他国の人間が命張って救おうとしてくれるのに、大人しく待つなんて出来ない。
どんな形でもいい。
私も父王や国を救いたかった。
そしてサルエル国王を討ちたい。
その思いは曲げられなく、話は平行線を辿る。
しばらくにらみ合いが続き、沈黙が降りる。
すると、いての間にか側にいたのか、ライがスッと寄ってきた。
「姫様の好きにさせたらどうだろう?カイル」
「は?お前なに言ってるんだ。あんなとこ連れて行けないだろう」
「でも、連れて行かなかったらこの姫様はひとりで乗り込むよ、きっと」
そう言って意味ありげに私に微笑みかける。
きっとサルエル領土で屋敷に単独で乗り込んだ時のことを指しているとわかり、顔が赤くなる。
カイルが話したのかと思うと恨みがましい。
また、目の前のカイルも思い出したかのように頭を抱えた。