狙われし王女と秘密の騎士
「お願いカイル。出来る限り剣の練習もするから。それに、今回は私がサルエル国王の前に行かなければ収まらないかもしれないの!」
必死に懇願すると、カイルは片眉を上げる。
ライも私に向きなおした。
「それはどういうことだ?」
「……サルエル国王の真の狙いはきっと私だから」
そう告げて唇を噛む。
それだけで察したのか「求婚されていたのか」と納得していた。
まさに、その通りだ。
「サルエル国王はかなりの野心家で、先の戦でエルシールが不利になったとき、私に求婚してきたわ。結婚すれば国を助けると。しかそそれは私がサルエルに人質に行くのと同じことだった。だからお父様はそれをはね除けて、でもなんとか必死に平和協定を結んだの。だけど……」
そう。
もとはといえば、私が求婚を退けたから。
きっかけは私なんだ。
平和協定を結んだ後もサルエル国王の執着は会談の時や舞踏会などの公式の場で会ったときも感じ取られていた。
「こうなったのも全て私の責任なの」
それに巻き込まれた国民にはどう謝っていいかわからないくらいだ。
そう思い、溢れそうになる涙を堪えるとカイルが口を開いた。
「結果は同じだろ?」
「え?」
「結婚してもしなくても、エルシールはサルエルに乗っ取られていた」
「そう……かもしれないけど」
「それにお前の責任ではない。サルエル国王の女好きはよく知られている。いや、女じゃないな。階級や身分だ。低い物は女でも見向きもしない。常に高い身分の者を好む習性がある。今までだってお前以外の姫や貴族の娘も目をつけられていたんだ」
「その通りです。姫様」
サルエル国王について調べていてのか、カイルとライはそう言って頷く。
慰めてくれているとわかってさらに涙がにじみそうになり、グッとこらえる。
そして、長い説得の上、カイルはついに観念したように深くため息をついた。
「仕方ないな。お前を含めた隊型を組み直す」
「いいのか?」
「言ったって聞かないだろ。こいつのことは俺がなんとしてでも守る。陛下には説明しておく」
「ありがとう!カイル!」
それを聞いて嬉しくて飛び上がり、カイルの手をぎゅっと掴んで何度もお礼を言う。
されるがままのカイルは複雑そうな顔をしていた。