狙われし王女と秘密の騎士
ナリエル国に滞在して一週間程が過ぎた、ある日。
国が思い出したかのように話した。
「あぁそうだ。エルシールに内偵を送ってみたが、やはりエルシール国王は城の地下に入れられとるそうだ」
そして私にチラッと目線を送る。
「シュカ姫を名乗った侍女も一緒らしい」
「ルカもですか!?」
私は驚きで声を上げる。
私の名前を名乗るのはルカしかいない。ルカも無事だなんて。
私は嬉しくてカイルの方を見るとカイルも笑顔で頷いてくれた。
一気にほっとし、安堵で涙が出そうだ。
「しかし……聞いたところによると、サルエル国王は街にも兵士を多くおいているので、身動きはしにくいとの事でした」
口を開いたカイルはお頭から送られてきた情報を国王に伝えた。
内容的にはマイナスなのだが、カイルは言った。
動きにくい。つまり、エルシール国民の絶望感は強い。しかしそれを上手く利用すれば国民が味方につくだろうと。
「どうやって?」
国王はカイルにその策を聞いた。
私もそれは知りたいところだ。
「エルシールの姫が亡命し我らに救いをもとめ、反旗を翻したと国民に広めるのです。つまり、ありのままの事実を」
国民が絶望しているときに希望を与えるのだ。
しかしその案に私は焦って待ったをかけた。
そうすれば一番危険な人物がいる。
「待って!そんなことをしたらお父様や私の身代わりのルカはどうなるの!下手したら二人の命がっ」
「勿論それも考えた。しかし、エルシールが襲われてからすでに一月以上立つ。その間、国王は討たれていてもおかしくないのに幽閉されたままだ。身代わりの侍女も、とっくにバレているはずなのに同じくまだ生存している。どういうことかわかるか?サルエル国王は二人を人質にしているんだよ。お前をおびき寄せるために。ならここは正々堂々と乗り込んでやろう」
カイルの言葉に何も言えなかった。
サルエル国王の狙いは自分かも知れないと話したのはこの前のこと。
しかし、本当に自分だけが目的だとしたら?
私が行くまではお父様もルカも無事であるということだ。
その考えに行き着くと、自然と身震いがした。
一緒に行くなんて本当に無謀だったのかもしれない。
無意識に腕をぎゅっと掴むとカイルは静かな声でいった。
「大丈夫だ。お前のことは何があっても守るから」