狙われし王女と秘密の騎士


でも、捕まってもいいと思っていたのも事実だった。


「……捕まっていたら死罪だろうな」


男は腕を組みながら壁によりかかる。
私は男を見上げた。
背の高い男だ。
よく見ると瞳が茶色く、ターバンから少しはみ出た襟足の髪の毛も茶系だ。
この国の者は、瞳も髪も黒か焦げ茶。サルドアもほぼ同じ系統だ。
顔立ちは鼻筋もスッと通っており、それなりに整っているが、きっとこの国の者ではないのだろう。

長いターバンを頭に巻き、背中には小さくまとめた荷物を掛け、腰には剣を下げている。
服はこの国の物だが、格好からしてこの街の人間ではない。
傭兵のようにも見えるが、そこまで厳つくはなかった。


「あなた……元兵士か何か?」


出兵した者は、戦争が終わると流浪の雇われ兵士や護衛として生活する者は少なくない。
この男も剣を持っていたため、てっきりそうかと思ったんだけど……。


「俺?俺は違うさ。ただの旅人。この剣は護身用」

「旅人?そう……」


探るように見るが男はそれ以上何も言わなかった。
とりあえず、素性はわからないが、この人は助けてくれたのだからお礼を言わなければならない。


「助けてくれてありがとうございます」



私は素直に男にペコッと頭を下げた。が……。
そんな私を見て、男はフンッと鼻で笑った。


「本当にそう思ってるのかねぇ~」
「……思ってるよ」


見透かされたような感じで少しムッとする。
まあ、取り合えずお礼を言っただけだから、何も言い返せないが。



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