狙われし王女と秘密の騎士
「……ーーリ。おいシュリ」
「あ、えっ!?」
カイルに呼ばれ、ハッとする。
顔を上げると、カイルが心配そうに私を覗き込んでいた。
「大丈夫か?」
いつの間にかしまいこんでいた記憶を呼び戻していたようだ。
「無理ならテントに戻っていていいんだぞ」
カイルの問いに大丈夫と頷き返す。
ここまで来て引き返す気は全くなかった。
山から見下ろすのは忘れることのなかった懐かしい故国。
空気も雰囲気も身体に染み付いたものだった。
そう。ついに私達一行はエルシール国境間近の山についた。
ここからは大きな城がそびえ立つのがよく見える。
軍は、すでに予定通り一陣を城の裏側に行かせ、月が上まで登ったのを合図に囮となってもらう。
もう一陣は城下街に残し、街の兵士の制圧や、国民の保護に当たる。
そしてもう一陣は囮が襲撃したあとに城へ向かうことになっている。
カイルが動かす軍は総勢3万人。
大国にしては軍は動かした少ないが、他国の事情に手を貸しているのであまり大軍ではこれないようであった。
「もうすぐ月が登るぜぇ」
ここで合流した頭が緊張した声で呟く。
その顔は緊張と興奮に包まれていた。
「お頭、俺とシュリは真っ先に城へ向かう。お前らは街を頼んだぞ」
カイルに全幅の信頼で頼まれると、お頭は力強く頷き返した。
「お頭、また会おう」
私はお頭を見つめる。