狙われし王女と秘密の騎士
なぜだろう。
そんな疑問がわく。
罠ではないかとカイルたちも警戒心を露にしていた。
それくらい、玉座の間へ続く道はとても静かだった。
誰もいない。
下から聞こえる喧騒は小さく聞こえた。
まだ戦いは続いている。それなのに、この廊下は不気味なほどに静まり返っていた。
すると、玉座の間に程近い柱のそばで何かが動き、カイルたちはパッと剣を構えた。
「陛、下……」
呟くような声によく見ると、そこには血まみれ姿の宰相の姿があった。
「セル!? お前、生きていたのか!」
「ああ、陛下。よくぞご無事で……。しかし、行っては、なりませぬ……」
父王の右腕とされていたセル宰相。
どうやらサルエル国王の側に捕らえられていたようだった。
よく見ると、身体中傷を作り、血まみれだが、大半は返り血のようで、致命的な傷はなさそうだった。しかしダメージは大きいようだ。
身体を動かすと痛むのか呻いている。
「サルエル国王は、狂っています。陛下、姫様……行ってはなりませぬ」
懇願するような目線で訴えてくる宰相に、父王は無言でその手を握る。
宰相はそれにハッとして言葉をつぐんだ。