狙われし王女と秘密の騎士
黙りこんだ私に、男はくくっと笑った。
「お前、面白い奴だな。この近くに住んでるのか?」
「違う」
「じゃぁ出稼ぎか?」
「違う。その……訳あって、旅をすることになった」
「行き先は?」
「それは、まだ決まっていないけど……」
そうだ。まだ何も決まってないのだ。旅をすると言ったって何をどうしたらいいかわからない。
ただ、国を取り戻すために、情報を集めてチャンスを作るんだ。
そのために私は生きると決めた。
男はふぅ~ん、と私をマジマジと見てくる。
ヤバイ。バレたかな?
だいたいこの男は何者なんだろう。
敵なのか。無害なのか。
警戒心は解けない。それなのにーー。
男の探るような目線にドキドキしていると、突然私のお腹がグゥ~と鳴った 。
「っっ!」
慌ててお腹を押さえるが、一度鳴り出すと止まらない。
そういえば、昨日の夜から何も食べていなかった。
「なんだ、坊主。腹減ってるのか?」
「……」
「仕方ねぇなぁ。付いてこい。飯くらい奢ってやるよ」
男は背中を向けてスタスタと歩きだした。
その姿に唖然とする。
何なの?この人……。
付いてこいってどうしようか。
まぁ、追ってではなさそうだが。
気を緩めない方が良いだろう。
でも、ご飯くらいは大丈夫かも知れない。
なにより、ルカが用意しておいてくれた資金も今後のために大切に使わなきゃいけない。
ご飯くらい奢ってもらおう。
そう思い、大人しく男に付いて行こうとした時、男があっ、と振り返った。