狙われし王女と秘密の騎士

旅人と姫君と




ーー……


「姫様ぁ!? まだ着替えてなかったんですね?」


ルカが部屋に入って来て呆れた声を出した。
それに私はギクッとする。


「もう! 私が出した服はどうしたんです!?」
「わかってるよ、今着替えるから」


私は渋々とルカが用意してくれた服に手を伸ばした。
着替えを手伝いながらルカは大きくため息をついた。
それにバッと振り返る。


「何? まだ身体、調子悪い?」


あれから一月近くたった。
ルカもしばらくは安静にしていたが、先日から仕事復帰している。
辱しめは受けていなかったのが不幸中の幸いだった。


「いいえ。身体はもういいです」
「なら何でため息つくの」
「姫様の気持ちを代弁したんですよ」
「え?」
「今日はカイル王子が国へお帰りになる日ですからね」


そう言われ、思わず俯いてしまう。
そうなのだ。
あれからずっとエルシールに逗留していたカイルも、今日、国へ帰る。



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