狙われし王女と秘密の騎士
「なぜ、平和協定を結んだばかりなのに。なぜ裏切った!?」
私の言葉に兵士は鼻で笑う。
「知るかよ。サルドア陛下の考えで俺らはやったんだ」
「そうそう。もうすでにこの国はサルドアの支配下にあるんだよ」
「恨むなら生ぬるいお考えのエルシール国王様を恨むんだな」
バカにしたように笑う男達に私はカッとなって、手近にあったお酒を思いっきり顔にかけた。
「何すんだよ!クソガキ!!」
「斬られたいのかー!!」
兵士達は怒りの声をあげて腰の剣に手をかける。
キャァァと店の中は騒然となった。
「この国は渡さない」
私も服に隠してある短剣に触れた。
もう許せない。お父様を侮辱したことで、私は怒りに震えていた。
しかし、その手をグッと大きな手が押し止める。
はっとして顔を上げると、カイルが隣に立っていた。
「すみません、俺の弟が何かしましたか?」
「カイル!」
私を押し退け、ニコヤカに兵士に近寄る 。
その柔らかい笑顔に兵士が顔を合わせて余裕そうに笑った。
「弟~?じゃぁ、兄貴も責任取ってもらうか!」
「カイル!」
カイルは男に胸倉を掴まれる。
カイルも背が高いが、相手は兵士だ。かなり鍛え上げられた厳つい体がにはいくらなんでも敵いそうになかった。
兵士は拳を挙げる。
殴られるっ!
とっさに私は目を瞑った。
が、悲鳴が上がったのは兵士のほうだった。