狙われし王女と秘密の騎士


「なにしやがるっ!」


少年は首根っこを掴まえたカイルを睨んでじたばたする。
しかしカイルは少年を見ずに、先ほど少年が出てきた茂みを鋭く見ていた。
カイルの空気が代わり、私も少年もはっとした。


「おい坊主。お前がやっつけたいのは、あーゆー奴らなんじゃないか?」


低くそう言って、少年を私に押し付け、腰の剣に手をかける。
先程、少年がいた茂みの所から四人の男がのっそり出てきて、こちらを見ていた。
服はボロボロで、無精髭を生やしている。いかにも盗賊という感じだ。
カイルは相手を睨んだまま薄く笑った。


「なるほどね。この村は盗賊に狙われやすいってことか」
「カイル……」
「シュリ。そのガキ、離すなよ」


盗賊が錆び付いた剣を抜いた。
カイルもシュと剣を抜き、茂みから出てきた盗賊に向け構える。
飾りのように思えていたその剣は鋭く光っており、手入れがされているのがわかる。

そして。
それはあっという間だった。
まるでカイルは踊りでも舞うような軽やかな身のこなしで、飛びかかってきた盗賊を倒していく。


「凄い……」


四対一であったのに。
カイルの強さは素人の私からもわかるくらい圧倒的に強かった。
盗賊なんて目じゃない。
この人……何者なの?

気付けば盗賊たちはすでに地面に伸びていた。


「ころしたの?」


少年は私にしがみつきながら震える声でカイルに聞いた。
私も城の催しで剣技は見たことあるが、血の流れる生の剣を使った実践は初めて見た。
少年を抱き締めながら青ざめた。


「いや。急所は外したが当分は自由に動けまい」


汗ひとつ流さず、アッサリとそう言うと剣を柄に納めた。
生きているのか。
それにはほっとする。
やはり人が目の前で死ぬのは見たくない。
安心したが、でもまだドキドキはすぐには収まらなかった。



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