狙われし王女と秘密の騎士
「本当にご迷惑をおかけして……。あ!あの、宜しければ家に寄って行ってくださいな」
少年の母親にちょっと強引に誘われて少年の家へ向かった。
少年の家はあの場からすぐの小さな家だった。
家の中は机にキッチン、隣の部屋は小さなベッドなど、必要最低限の物しかない。
小さな庭には、農作物が育ててあった。
正直、見た感じだと生活には苦労はしてそうだった。
今は少年と母親の二人で暮らしているとのことだ。
「あの、失礼ですがご主人は?」
私がそう聞くと、母親はお茶を出しながら悲しそうに小さく微笑んだ。
「先の戦争で帰らぬ人となりました。今はこのバルと二人です」
母親はバルと呼んだ少年の頭をポンと叩く。
「父親がいなくなってからこの子はあぁやってよそ者に向かって行くようになりましてね。まったく!困ったもんです」
「だって!だってさ、この村のおっちゃんたちはほとんど皆、戦争行ったり、怪我してたりでさ!だから、おいら……」
「だからって、あんたに倒せるわけないだろう!危ないじゃないか!」
母親が叱るとバルはプッと頬を膨らました。
「そうだな。お前はもう少し大きくなってからじゃないと危ないな。な、シュリ」
カイルに話を振られ、はっとしてぎこちなく「そうだね」と頷いた。
心が痛む。仮にも私は王女だから。
だって、バルがこんなことをするのは、戦争があったからだ。あんな戦争がなければ、小さなこの子はこんなことはしないだろう。
国を守るためには犠牲が伴ってしまう。
そうじゃない国を作るにはどうしたら良いのだろう。
「しかし、国民は志願兵を募っていたと聞いた。無理に参加する必要はなかったんじゃないか?」
「えぇ。この村は昔から兵士や国の政に興味のある奴が多くてね。志願兵の話しが出た時は、男共はそりゃぁ、張り切ったもんさ」
母親は自慢でもするように胸を張った。