狙われし王女と秘密の騎士
「カイルゥー!!」
夕食が終わると、バルはピョンとカイルの膝に飛び乗るように座る。
すっかりカイルに懐いているようだ。
「ごめんなさいねぇ、カイルさん」
「いや、大丈夫。ナチさん、バルと風呂入っていい?」
カイルはバルの母親ーーナチさんに向かってバルを抱っこしたまま振り返った。
ナチさんはそれを見て微笑んで頷く。
「助かるわ」
ワーイと喜ぶバルとカイルは外にある風呂小屋へと向かった。
それを見送り、私は食事の後片付けを手伝う。
「ありがとう、シュリ君も入ってきていいのよ?」
「あ、いや、俺は……」
それは、マズイ。絶対なできない。
そんなことしたら女とばれてしまう。
笑って、あの二人の邪魔をしてはいけないからとごまかし、後で入ると話した。
「でもバルのあんな嬉しそうな顔、久しぶりだわ」
「カイルに懐いてますね」
「父親に面影を重ねているのね」
「父親……」
「あ、もちろんカイルさんには似ても似つかないわよ。あんな男前ではなかったわ。でもね、なんかこう、男っぽい雰囲気が似ているのかもね」
そうか……。
やはり、小さなバルは父親が恋しく思う時があるのだろう。
ナチさんだって、明るく振る舞っているが、旦那が亡くなったことで生活も変わり、寂しく辛い思いもしているかもしれない。
戦争がなければこんなことにはならなかったのだ。
「ナチさんは……」
「うん?」
「国王を怨んでいますか?」
ナチさんの動きが止まる。
そして、手元を見つめている私をゆっくり振り返った。
「どうして?」