狙われし王女と秘密の騎士
そんな私を見て、カイルはフッと笑った。
「エルシールが好きなんだな。シュリは」
「うん、好きだよ。……でも、俺は無力だと痛感してるけど」
ポツリとそう独り言のように呟く。
いつも守られてばかりだった。そんな私に何が出来るだろう?
必死に考えるが何も浮かばない。全てが漠然としていた。
「そんなもんじゃないか?」
「そうかな」
「そうだ。誰だってひとりだと無力だよ。気にすることない」
思いがけないカイルの励ましには少し驚いたが、嬉しくなり下を向いて微笑む。
「ありがとう」
「なぁ、シュリは、なぜ旅をしているんだ?」
「……大切な人達を守れなかったんだ。守られてばかりでさ。でも、そんな俺に生きろと言ってくれた人がいた。生きなくてはいけないと」
「ふぅん」
カイルは草の上にゴロンと寝転がる。
フワッと草の匂いがした。
「だから、旅をしている」
カイルは「なんだそれ」と苦笑する。
「お前の話は繋がってるようで繋がってない気がするが。お前、良いとこの坊ちゃんだったのか?没落でもしたのか?」
「うん、まぁそんなとこかな」
「そりゃぁ大変だね」
人ごとのように(そうなんだが)カイルは相槌をうった。