狙われし王女と秘密の騎士
カイルはそのまま何も言わず、ただ隣にいてくれた。
私はその横顔を見つめる。
よく考えれば、カイルとは今日出会ったばかりだ。
結果的に私が変に巻き込んだのだが。
なのに、何も言わずに一緒にいる。
この人は何者なのだろう。
なぜ、私とこうしているのか。
なぜ?
「ただの興味だ」
「えっ!?」
カイルが急に口を開いて私は驚いてしまった。
「小さく“なぜ?”って聞こえたから、どうして一緒にいるかってことかと思ったんだけど」
「あぁ、うん」
そうか、口にしていたのか。ビックリした。心を読まれたのかと思った。
でも、興味って……。
どういうことだろう。
「ガキがサルドアに喧嘩売ってた。そしたら巻き込まれた。後は興味」
何ともあっけらかんと言われると、なんか構える気にもならなくなる。
興味だけでついてこられても嬉しくないが、正直、カイルが側にいてくれて助かっている。
それに、なぜだかカイルには警戒心がわかないのだ。
もちろん、王宮暮らしをして何時も守られていた私が、何が正しく安全かだと判断するのは他の人からしたら出来てないと思われるかもしれない。
でも、相手を打算や利用などしようとする腹黒く心が黒い人を見分ける力はついていると思っている。
自然とその力が付くぐらい、王宮と言うところは暗い部分を持っている。
でも、カイルは出会った時からそれを感じなかった。むしろ、安全だと思わせる人だ。
カイルにはそう思わせてしまう何かがあった。
この人が敵か味方かわからない。今日であったばかりだというのにこの人は大丈夫だと私の中で確信しているのはなぜだろう。
直観的なものなのだろうか。
わからないが、でも、しばらく様子を見るのもよいかもしれない。
そんなことを思っているとナチさんが慌てた様子で私達を呼びにきた。