狙われし王女と秘密の騎士
宿の部屋に着くと真っ先にベッドにダイブする。
その気持ちよさに大きく溜め息が出た。酒の力と疲れとで一気に眠気が襲ってくる。このまま眠ってしまいたい。
「荷物も降ろして楽にしとけよ」
「ん~……」
カイルの言葉に返事をしながらも一向に動こうとしない私に後ろで溜め息が聞こえた。
「ほら」とカイルは私の羽織りに手をかけて脱がそうとする。
それにハッとしてガバッと勢いよく起き上がった。
「あっ!いや、これは自分で降ろすから!」
酒のせいでグラッと目眩がしたがそんなの気にしていられない。
私の行動にカイルは一瞬、怪訝な表情をしたが「そっか」とそれ以上は特に突っ込んでこなかった。
離れていくカイルにホッと胸を撫で下ろす。
良かった…。
カイルには悪いけど、これをあまり見られたくなかったのだ。
私は羽織ローブの下に背負っている硬い感触を意識する。
そこにはとても大切な物があった。
そう。背中に背負っているのはお父様から預けられた短剣だ。
これには小さくだけど、王家の紋章が刻んである。
紋章つきの剣なんて普通の人は持つことはありえない。 気軽に王家の紋章を使用できないからだ。
それを私が持っている。
パッと見は少し値のはるようないい短剣に見えるが、わかる人にはその価値と刻まれた紋章に気付く。
もしこれに気付かれ素性がばれたらマズイ。
たとえ、王女と気がつかれなくても盗人、またはそれ同等の嫌疑にかけられ役人につき出されてしまうだろう。
カイルに見られなかったことに安堵していると
目の前にコップが差し出される。
「ほら、水飲め」
「あぁ、ありがとう」
水を一気飲みする。
自然とほっと息をついた。