狙われし王女と秘密の騎士
「旅の理由か……」
「そう。カイルは他国の人だろう?どうしてこの国に来たんだ?何か目的があったんだろう?」
「……」


カイルは言葉を考えるように一点を見つめる。
あ、マズイこと聞いちゃったかな。
もしかして触れてはいけない部分だったのか。しかし、こちらとしても素直な疑問だ。
成り行きとはいえ、一緒に旅をしているのだから疑問に思うのも自然なことだろう。
そう思ってドキドキして返答を待っているとカイルはこちらをチラッと見た。


「シュリはこのエルシール国から出たことはあるか?」
「国から?……ない」


私はこの国から出たことはない。簡単には出れなかった。出るとしたら、使節団を組んだり、護衛を着けたりと大掛かりになってしまう。
こんな風に身一つで街に出ていることだって、本来ならあり得ないことだったのだから。
そういえば、お父様にいつか西の国に連れていってもらう約束していた。


「そうか。俺はね、旅をしながらいろんな国の情勢を見ているんだ」
「情勢……?」
「そう。自由に旅をする代わりに、寄った国々の様子を見ているんだ」


………おい。
カイルはシレッとした顔で言ってるけど、私は驚きで言葉が出なかった。
各国の情勢を見ている?
普通の人が情勢を気にしたところで、どうなることでもない。
各国の情勢を見て、情報を必要とするのは政府や官僚だけだ。
それはつまり、国の政に関わる。
つまりは、カイルはただの旅人じゃないのだ。


「……誰かに頼まれてるんだ?どこに報告しているの?」
「そんな大事じゃない。まぁ、知り合いにちょっと旅してもいいからついでに各国の様子見てきてって頼まれただけ」


何気なくサラッと言ってるが、結構なことだ。
国々の様子を知りたがる一般人なんてそうはいないのだから。
そんなこと頼んでくるならそれなりの階級の人。
つまりは政治関係者。


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