狙われし王女と秘密の騎士

私は内心かなり動揺していたがそれを悟られないように笑顔をむけた。


「へぇ。じゃぁ、その知り合いに頼まれて旅しながら情報を伝えてるんだ?」
「そんなスパイのようなもんじゃない。立ち寄った場所の様子を伝えてるだけだ。内乱があるとか、作物が育っているとか、その国の文化とか。そんな簡単なこと」


似たようなもんだと思うけれど。
疑惑の目を向けていたが、それを本当にスパイだと勘違いしていると思ったのか、そこは強く否定していた。そしてサルエル国とは一切関係ないということも。
どうやらカイル的には旅の片手間にやっているだけということらしい。
しかし、“ただの旅人”に依頼する内容なのだろうか。


「カイルって身分ある家の出なのか?」


だとしたら何だか納得がいく。
服装の割には品もあるし、存在感もある。例えば没落した貴族の出だとか、元官僚とかだと言われても頷けるかもしれない。
そう思っていると、カイルはニヤッと笑った。


「シュリには俺はどう見える?」


どうっていわれても。
情勢を見ているということから、素直に平民には見えない、貴族か官僚か、もしくは役人か、なにかしら身分はあるように思えると話す。
するとカイルはその整った顔立ちを私にスッと向けた。


「身分とかじゃなくてさ。シュリには俺っていう人間はどう写る?」
「意味がよくわからない。カイルはいい人だと思うけど謎が多い」


そうだ。高い身分の出なら一人で旅なんてするはずがない。
そう思うと、身分はなく、ただの旅人で能力を買われただけな気がしてくる。



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