野球が嫌い。あんたも…大っ嫌い!
「俺の名前はけんた。みずたにけんた。この通りの角を曲がったとこが俺んち」
そう。
ちょっと強引で、よく笑顔を見せて、あたしを外の世界に連れ出してくれたこの男の子が、健太だった。
「あたしは、あだちみわ」
「みわね。よろしく」
「よろし……」
「なあ、今からいいところ連れてってやるよ」
まだ言い終わらないあたしをよそに健太はお構いなしに
「こっち」
あたしの腕を奪い走り出した。
ちょっ、何なのこの強引さ!
それにまだ返事もしてないし、靴もちゃんと履けてないんですけどーー!!
そう思うも健太についてくのがやっとで、
健太に掴まれてる腕に熱を感じて、
そんな細かいことはどうでもよくなってしまった。
あたしは新しい町の空気をいっぱい吸い込んで、あたしの町となる町の中を走り抜けた。