野球が嫌い。あんたも…大っ嫌い!
離れた2人
平日も休日も、健太は野球尽くしになった。
休み時間は野球クラブの子たちと過ごし、放課後はグラウンドで練習。
唯一健太と一緒にいられた登校の時でさえも、会話の内容は野球のこと。
正直、会話についていけなかった。
野球は嫌いじゃなかったけど、詳しくはなかったから。
だから基本のルール、ポジションなんかを自分なりに調べて覚えて、知識を取り入れて、
準備を万全にしてからあたしは夏休みに健太を誘ってみたんだ。
『また境内でキャッチボールしよう』って。
夏休みなら大丈夫なんじゃないかって。
夏休みなら出会えた頃のように遊べるんじゃないかって。
そう期待していたのに、
『クラブの奴らと遊ぶから無理!』
ますます野球にのめり込んでいった健太。
あたしにはたまーに構う程度で、あとは全て野球。
あたしの心はぽっかりと穴が開いてしまったかのように、
寂しかった。
健太が隣にいない夏休みも、学校生活も。
全てに色をなくしてしまったかのように、寂しくてつまらない日々。
どんなに野球を恨んだか分からない。
どんなに野球がなくなってしまえばいいと思ったか分からない。
それだけあたしにとって健太は、大切な存在だったんだ。