野球が嫌い。あんたも…大っ嫌い!

空のてっぺんまで昇った夏の太陽。


その日差しを和らげてくれる昇降口から校門までの木々の道。



明日から夏休み。


近くで聞こえる声も、遠くで交わされる挨拶も、横を通り過ぎる自転車の車輪の音も、

どこか弾んでて浮かれてて軽快に聞こえる。


聞かなくても目の前の夏休みへの期待が手に取るように伝わってくる。


あたしだって学校から解放されて自由な時間が出来るのは嬉しい。


嬉しいけれど、

夏休みを素直に喜べない自分がいる。


矛盾しているけれど、夏休みがこれから始まるのだと思うと気分が落ちていく……



「おーい! 美和ー!」



――!!



そんなことを思いつつ歩いていると突然名前を呼ばれ、


でも、あたしは立ち止まりも振り向きもしないで歩き続けた。


確認しなくてもその声が誰なのか、そしてどこから言っているのかが分かるから。


だからこそ無視して歩き続けたんだ。


それなのに……


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