野球が嫌い。あんたも…大っ嫌い!
「美和……?」
「えっ?」
健太に顔を覗き込まれ、健太の表情が驚きに変わり、あたしはそこで自分の頬を伝うものに気付いた。
「やだ、なんで…」
拭っても拭っても溢れ出てくるそれに
「ははっ、やだ、どうしちゃったんだろうね…」
なんて言うも、壊れてしまったそれに歯止めはきかず、気持ちに嘘をつけなくなっている自分がいた。
…本当は、本当は、
ずっと健太と一緒にいたい。
ものすごく、
健太を奪う野球が憎い。
憎くて仕方がない。
もう健太と離れたくないよ…。
何年も溜めてきた想いが溢れ出す。
「美和…?」
「…もう、野球野球って、あたしを…1人にしないで…」
気づけばそんな言葉が口をついて出ていた。
涙も感情も、もう抑えられない。
「もっとあたしを見て。もっとあたしの傍にいてよ…」
止められない――。