野球が嫌い。あんたも…大っ嫌い!
気付くとそこはもう家の前。
不思議なことに、別れることに寂しさはなかった。
きっと健太があんな言葉をくれたから。
「じゃーな、心配だからこんな時間に1人で出歩くなよ?」
「分かった。あたしにそう注意するようにお母さんに伝えとく」
「おばちゃんがじゃなくてお前が注意しろよ」
「はいはーい」
健太は「じゃーな」と言って手を振り背中を向けて歩き出した。
あたしはその背中を見届け、心の中でそっと呟く。
怪我には気をつけろよ、バーカ。
憎くて大っ嫌いな野球。
でも今だけは健太も野球も少しだけなら許せそうな気がした。