野球が嫌い。あんたも…大っ嫌い!

必勝祈願と書かれた青いお守り。



「これをあたしに?」



あたし何かと戦ってたっけ?


ハテナマークばかりを浮かべてるあたしに美智子おばちゃんは「違うわ」と言って言葉を付け足した。



「このお守りを健太に届けてほしくて…。あの子忘れてったのよ」


「健太に?」


「そう。あ、それとも今は無理?」


「いや、それは大丈夫だけど」



ハンカチで額の汗を拭うおばちゃん。



「美智子おばちゃんは今日の試合見に行かないの?」


「ん? ああ。行けることは行けるのよ。でもちょっと今から用事があってね。
試合開始に間に合うかどうか分からないから美和ちゃんに届けてもらおうと思ったのよ。
若い子の方が足が速いでしょ? 体力もあるし。
でもそしたら美和ちゃんが家から出てくるでしょ? だからもうおばちゃん焦っちゃって。
こんなに走ったの何年ぶりって感じよ。はぁー駄目ね。歳には勝てないわ」


おしゃべり大好きな美智子おばちゃんはどこで息継ぎをしたのかさえ分からない早さでそう捲し立てた。



「コンビニ行くつもりだったし、ついでにいいよ。どうせ暇人だし」


「ありがとう、助かるわ。あの子ったら地区大会から持ち歩いてるお守り今日に限って忘れてくんだから」


「今日に限って? てかやっぱり今は県大会中だったり?」


「やだ、美和ちゃん。もう県大会の準決勝よ。でね、今日の相手が優勝候補の一角にあげられてるとこなのよ。
古豪で有名なところ」


「健太たち勝てそう?」


「どうかしらね。でもそこに勝てれば優勝したも同然って感じ? だからね、おばちゃん応援に力入っちゃって。
ハチマキだって作っちゃったんだから」


「か、勝てるといいね」

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