野球が嫌い。あんたも…大っ嫌い!
学校の正門前に1台のバスが停められていて、
正門を通ると白いユニフォームを着た野球部員が1ヶ所に集まっていた。
出発前だったことにほっとし、あたしは近くの部員に声をかける。
「ねえ、水谷健太しらない?」
「えっ? 水谷先輩っすか? えっとー…」
辺りを見渡す野球部員の様子を見ていると
「おぉ、足立!」
聞き覚えのある声にあたしはある野球部員を見つけ出す。
「大輔!」
ユニフォーム姿の大輔がこっちに小走りしてきてくれた。
大輔とは小学時代から知ってるクラスメイト。
健太たちと混ざって夏休みも一緒に遊んだ中の1人だ。
「どうかしたか?」
「健太知らない? 渡したいものがあるんだけど」
「へぇ、珍しいな。足立の口から健太の名前が出るなんて」
「違うって。健太のお母さんにこれ、頼まれちゃったの」
あたしはお守りをポケットから取り出し、紐を持って大輔の前でゆらゆら揺らして見せた。
「なるほどね。幼馴染みってのも大変だな」
「まーね」
あたしはお守りを手の中にしまう。
「健太はたぶん、まだ部室じゃないかな。
悪いけど用が済んだらすぐにこっちに来るよう伝えてくれないか?もう集合かけるって。
俺、もうすぐ監督くるから居なきゃダメでさ」
「大輔ってそんなに立場偉かったっけ?」
「俺、一応キャプテン」
「ああ、そう。分かった。伝えとくよ」
「わりぃな」
片手を顔の前に出す大輔に手を挙げて答えた。