野球が嫌い。あんたも…大っ嫌い!
自分がさっき見たものを思い出し、まさか…という思いが脳裏を過ぎる。
けれどあたしはそれをすぐに拭い去った。
だって大事な試合前だもん。健太がそんなことしてるはずがないよ。
それにそういった噂、聞いたこともないし。
うん。ないない。
さっさとここを通過して健太にお守りを渡さなくっちゃ。
……でもちょっとだけ。
そんな興味本位から、木の幹からちょっこっと顔を出して――
――あたしはその場にへたり込んだ。
抱き合ってたユニフォーム姿の男が、紛れもなく健太だったから。