野球が嫌い。あんたも…大っ嫌い!
健太は「ごめん」と言って言葉を続けた。
「違うんだ。ああなる前にその子から告られて、で、断ったんだ」
健太は言葉を続ける。
「諦めるかわりに抱き締めてほしいって言われて。1度は断ったんだ。
でもそうしてくれなきゃ諦めないって言われて仕方なく。でも間違ってた。好きでもない女を抱き締めるなんて、
それを悲しむ奴がいるってことにさっき気づいたんだ。俺が1番悲しませたくない奴を悲しませた」
あたしはポカンと口を開けたまま固まってしまった。
だって2人は付き合ってなくて、好き同士な訳でもなくて。
抱き合ってたのだってその女に迫られて仕方なく…?
で、でも待って。
「け、健太が1番悲しませたくない奴って…?」
あたしの言葉に、健太はまっすぐ逸らさずにあたしを見た。
う、自惚れかもしれない。
そんな思いが頭を過ぎる。
健太はそんなあたしにふっと優しい笑顔を見せると、手にしていたお守りの紐を解いて、
中から四角い白いものを取り出したかと思うと、それを広げて、お守りを見せた時と同じように頭の上にかざして見せた。