野球が嫌い。あんたも…大っ嫌い!
健太が放ったボールはあたしの手元に飛んできて、それを難なくキャッチする。
良く見ろって?
意味が解らないまま健太の言うとおりに両手でボールをくるくる回し、隈無く見てみる。
手の中でボールの白い側面が続く。
でもある面に来て、
一瞬息が止まった。
あたしの手と手の間にある、白いボール。
その側面に浮かび上がる、黒い文字。
黒インクが少し滲んででもはっきりと書かれた言葉。
『好きだよ』
何よこれ。
何でボールになんて書いてる訳?
普通手紙とかじゃないの?
これじゃ、
野球バカ丸出しじゃない。
笑いが込み上げてくる。
でもそれと同時に瞳から涙が溢れ出てきた。
健太の気持ちが込められたボール。
すごく嬉しかった。
健太もあたしの事を大切に思ってくれてた。
特別な想いも持っていてくれた。
あたしは、幸せ者だったんだね。