野球が嫌い。あんたも…大っ嫌い!
あたしは涙を拭い、腕を組んで足も組んで見せた。
「あたし野球嫌いなんですけど? こんなものもらっても困っちゃうんですけど!」
「ははっ。そうだな。そんなのもらって喜ぶのは野球バカの俺ぐらいだな」
自分で認めちゃう健太。
「でも本当はそんなボールにじゃなくて…」
一段。また一段と石段を上がってくる健太。
そしてあたしの前まで来て屈み
「……これが、俺の気持ち」
健太はそう優しく言うと、あたしの肩に手を乗せて顔を近付けた。
あたしはそっと瞼を閉じた。
触れ合う唇。
唇から伝わる健太の優しさ。
こんなにも幸せな時間が訪れるなんて思ってもなかった。
触れ合うだけの唇はそっと離され、瞼を開けると、目の前には健太の顔があった。
そして健太はこの町の絶景をバックに白い歯を見せた笑顔を作り、あたしに一言こう告げた。
「好きだよ」
と。