野球が嫌い。あんたも…大っ嫌い!
野球バカはやっぱり野球バカ
もー、意味わかんないんですけど!!
何でこーなるわけ!?
握りこぶしを作って、昨日初めて歩いた廊下をズカズカと突き進む。
廊下にいる生徒があたしに振り返ってくるけれど、そんなこと気にしていられない。
あたしはこの疑いがたい事実の真相を確かめるべく、ある教室に向かっていた。
高校生活初日にして何故あたしがこんなにも感情を荒立てているのか。
それは数十分前の朝にさかのぼる。
―――
――――――
「美智子おばちゃーん、健太いますー?」
真新しい制服に身をまとい、あたしは水谷家の玄関で叫ぶ。
昨日入学式を無事に終え、今日から高校生活が始まる。
新しい環境に、新しい友達。
期待と不安が入り交じる登校初日。
そんなすばらしい朝を健太と向かえるはずだった。
一緒に登校するはずだった。
なのに、
待っても待っても姿を現さない健太。
しびれを切らして向かった先が水谷家。
「あら、美和ちゃん」
エプロンで手を拭きながら姿を現した美智子おばちゃん。
「どうしたの?」
「健太いません? いくら待ってても来なくて」
あたしの言葉に美智子おばちゃんは首を傾げてさらりと言葉を口にする。
「健太なら野球の練習があるって、朝早くに出て行ったわよ?」
「はい?」