野球が嫌い。あんたも…大っ嫌い!
耳を疑う。
野球の練習?
野球を辞めたはずの健太が何で野球の練習?
美智子おばちゃんが何か勘違いしてるのかと思った。
けれど
「入部届け出した時に言われたんだってね。
入学式の日は大目に見るけど次の日からは新入生と言えど朝練に出てきてもらうって。
さすが高校ね。朝起こすの大変だけど甲子園目指すなんて意気込んでるし、そんなこと言ってられないわね。
私も健康管理とか頑張らなくっちゃ」
詳しすぎる情報に勘違いをしているようには思えなかった。
ということはそういうこと!?
「また忙しくなるわ」と可愛らしくガッツポーズを作る美和子おばちゃん。
でもあたしはそれどころではなかった。
入部届けだ?
甲子園を目指すだ?
あたし何も聞いてないんですけど!?
ふつふつと込み上げてくる怒り。
自然と作られる握りこぶしにギュッと力を込める。
「美智子おばちゃん!! あたし学校に行ってくる!!」
「そうね。もう行った方がいいと思うわ。時間も時間だし、初日から遅れ――」
まだ言葉を続けていた美智子おばちゃんだったけれど、あたしは勢い良く水谷家の玄関を飛び出したしていた。
時間に余裕がなくてではない。
健太にこの真相を今すぐにでも問い詰めたいという感情があたしにそうさせた。