野球が嫌い。あんたも…大っ嫌い!


ズカズカズカズカ、


ピタ!



あたしは教室の扉の前に立つと、


ガラガラガラガラ!!


と勢い良く扉を開け放った。


一斉に集まる生徒の視線。


あたしはその中から健太の姿を探す。


――いた!


教室の後ろの方に数人の男子に囲まれて笑っている健太の姿。


あたしは廊下での勢いそのままに教室を横切り、健太に向かう。



「ちょっと健太!」



あたしの勢いに健太の周りにいた男子がその場をすっと離れる。

でも健太は



「よお、美和。おはよーさん」



なんてのんきにご挨拶。


「おはよーさんじゃないわよ! 野球部の練習に出たってどういうこと!? 入部届け出したって本当なの!?」


「何、もう知ってんの? 今日あたり話そうと思ってたのに」


「はぁ!? じゃその話本当なの!?」


「ああ、本当♪」


「本当♪って! 何であたしに相談の1つもないわけ!? あたしとずっと一緒に――」



そこまでいいかけて、あたしは口を押さえて辺りを見渡した。


クラス中の突き刺さる視線。


廊下からも見物者がいて…


さすがにこの続きを口にするのが恥ずかしくなってしまった。


もぉー!!
場所変更!!


「ちょっとこっち来て!」


あたしは健太の腕を掴んで引っ張るようにして教室を出た。


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