野球が嫌い。あんたも…大っ嫌い!
「軟式も硬式も野球には違わないんですけど!」
「ま、そーなんだけどさ。
俺の中でしっかり区切っておきたかったっていうか、高校野球でまた新たな気持ちで挑みたいっていうの?
だから終わりって言ったの」
「そんなの分かるわけないでしょ!! あんな風に言われたら誰だってもう辞めたんだって思うじゃない」
「ははっ、そうだよな。後でちゃんと話すつもりでいたんだけど」
説明が足りなかったことに少しだけ反省の色を見せている健太。
でも、でもでも! 言ってることとやってることが違うことがまだ1つある。
「これからはあたしとずっと一緒にいてくれるって言ったよね?寂しい想いささせてきた分、一緒にいてくれるんじゃなかったの?」
「ずっと一緒にいただろ? 大会終わってからずっと。それに…」
健太は興奮するあたしに近付いて、なだめる様にしてあたしの頭に手を乗せた。
「これからもずっと一緒に、だろ?」
首を傾げて顔を覗き込んでくる健太に不覚にもあたしの心臓はキューンとなってしまった。
こ、こんなの反則だ。
あたしは咄嗟に顔を下に向ける。
「…健太がまた野球を始めること、別に怒ってるわけじゃないよ…」
健太がまた野球を始めること、本当は嬉しく思ってる。
野球が大好きな健太。
野球を頑張る姿を応援したいって思う。
ただ、また、野球に健太を奪われると思うと寂しくてたまらない。
「ちゃんとあたしにも色々相談してよね。あたしを置いていかないでよね…」
そうぼそぼそっと口にすると、健太はその不安を打ち消すように、あたしの頭を自分の胸にそっと押し当てた。