野球が嫌い。あんたも…大っ嫌い!
「今回は自分で勝手に決めて悪かった。これからはちゃんと美和に話すから。置いてかないから」
健太の腕が背中に回され、優しく包み込まれる。
「寂しくなったらいつでも呼んでいいから。
どんなに疲れてたって美和に呼ばれたら吹っ飛んで行くから。だから心配すんな、な?」
いつになく心強い言葉をくれる健太に、いつの間にかあたしの中の不安は消えていた。
そうだ。
あの頃は健太の心の中が分からなくて、不安で、不安で、寂しかった。
でも、今は違う。
今は気持ちが通じ合えている。
しっかり心は繋がっている。
これから健太はまた野球尽くしの毎日になるかもしれない。
でももう、不安がることも、寂しがることもない。
だって野球に健太を奪われる訳じゃないから。
健太はここに帰ってきてくれるから。
だからあたしは健太を野球に送り出す気持ちでいればいい。
帰ってくる居場所を残しておけばいい。
そんな風に思えるのは健太と心が繋がっているから。
健太が優しい言葉をくれたから。
だからあたしたちは大丈夫。
それに、きっとこれが野球バカを好きになってしまったあたしの宿命。
「……うん。きっと大丈夫」
「それにさ」
健太はあたしから体を離し、声をいつもの調子に戻して言葉を付け足した。
「俺たちには心強い味方もいるし」
「味方?」