野球が嫌い。あんたも…大っ嫌い!
「おっと、集合だ。じゃ美和、気を付けて帰るんだぞ。じゃーな」
健太はそれを確認するとクルリと向きを変え軽快に走って行ってしまった。
「…………」
あっという間のやり取り。
そして何の未練もないような立ち去り方。
何よあれ。
込み上げてきたものは苛立ちだった。
だから振り向きたくなかったのよ。
何が大事な幼馴染みよ、野球ばっかなくせに。
中途半端にかまって。
中途半端に心配して。
あんたなんか…
「野球のやりすぎで脳ミソ腐ってそのまま死んじゃえーーー!!」
小さくなってしまった健太の背中に思い切り叫んでやった。
でもその声は届くことなく、夏の青い空へと吸い込まれていった。