野球が嫌い。あんたも…大っ嫌い!
「ちょっと、離してよ!」
家から連れ出されてすぐに腕を掴んでいた手を振り払った。
「あんた誰? 何なの?」
突然現れて、突然連れ出して、あたしのペースを乱して
何が何なのかぜんっぜんわかんない。
ふーーん、と鼻息を荒らたてて男の子に主張するけれど
「ほら、あそこ。あの部屋お前の部屋だろ?」
全く人の話し聞いてないんですけど!この人!
もう!と言わんばかりに男の子が指差す方に顔を向けて
「……あっ」
あたしは小さく声を上げた。
向けた視線の先には、新しくあたしに与えられた部屋の窓。
あたしの部屋、どうして知ってるの?
そう聞く前に男の子が口を開いた。
「ここ2、3日あの窓からずっと外眺めてる子がいてさ。何かすっげー外で遊びたがってるように見えて」
そこまで言った男の子に視線を戻すと、男の子もあたしの方に顔を向けていて、
「だから誘ったってわけ」
にいっと白い歯を見せて笑顔を見せた。
この時すでにあたしはこの笑顔にやられていたのかもしれない。