ますかれーど
--麗花side--
「ねぇ、会長」
「何?紅澤さん」
「どう思います?」
夏も終わりだから、だんだんと陽が短くなる。
半月が顔を出し、的がいよいよ見えなくなってきたので、これにて部活は終了です。
「あぁ、2人のこと‥かな?」
「はい」
「こっちの2人は怖いくらいに穏やかだよ?千秋が銀崎さんから距離を取ったからね」
そう言った会長は、馬を舎まで連れて行く。
私も、私の馬を連れて行く。
大会の出場権があるのは、私と会長だけ。
練習を手伝ってくれたみんなにお礼を言い、私たちは馬や弓矢のメンテナンスをする。
「距離、ねぇ‥。それがあの2人にとって、正しい選択だったんでしょうか?」
「うーん。どうだろ?2人とも笑わなくなっちゃったしね」
「……会長、心のあの顔がニセモノだって気付いてたんだ」
「まぁね」
「鋭いですね」
「まぁね」
きっと、会長も私と同じように。
あの人たちの近くに居ることがツラい。
そう、思っているんだ。
「そっちは?」
「え?」
「お兄さんと、銀崎さん」
「んー‥。まったくの、すれ違いですよ」
「そう‥」
キラキラ光る半分と
闇に飲まれた半分と。
「心は、どうしたいんだろ?」
「ん?」
「端から見れば、答えはハッキリしてるのに」
そう。だからこそ、もどかしい。
この状況が、ツラいの。
「紅澤さんは、銀崎さんもお兄さんも大切なんだね」
「そりゃそうですよ。血の繋がった兄貴と、産まれた時から一緒にいる、幼なじみですよ?」
「そっか。その絆、羨ましいな」
会長は、ふっと悲しそうな顔をした。
“絆”
そうだね。
でも、あの2人にとっては、それは邪魔なんじゃないかな?
普通に外で出逢っていたら?
幼なじみなんかじゃなかったら?
2人はまるで、双曲線みたい。
交わる事は、ないのかな?
紺野千秋が、もっと強引に奪ってくれたら……
兄貴が、もっと早く自覚していたら……
あの子は、あんな顔を見せずに
また新たな仮面なんて被らずに
笑ってくれたのかな?
これは、当事者の問題。
だから、
私は見てるコトしか出来ない。
見てるコトしか
ーー出来ないんだ。