ますかれーど




「どう思う?」

「何がですか?」

「月、まっぷたつ」



一通りメンテナンスが済んで、それぞれ着替えを終えた私たちは、靴箱で合流した。



「怖い‥かな?」

「そうだね」

「白と黒が半分ずつ」

「ん。マスカレードの仮面みたいだ」



仮面舞踏会は、誰が誰だかわからない。

身分を隠し、ココロを隠し、被った仮面に新たな自分を作り出す。



「端から見れば、簡単に分かるんです」

「何が?」

「誰が誰に矢印を向けているのか」



2人で月を眺めながら、通り過ぎる夏の終わりの風に、髪の毛を押さえる。



「心の矢印がどこを向いているのかなんて、昔から一目瞭然でっ!

だから私、わたし‥」



なんだろう。
なんか、涙が出そうだ。

そんな私の肩を、ふわりと抱き寄せた会長。



「あ‥ごめんなさい。弟くんのこと‥」

「良いよ。千秋も、それが分かったから距離を取ったんだろうし‥」

「なんで‥なんで、上手くいかないんだろう」



肩に触れる会長の手は、大きくて、温かくて。



「兄貴の矢印は、どこいっちゃったんだろ。もう、見えなくなっちゃって」



会長たちの幼なじみの姫衣ちゃんから始まる矢印は、兄貴まで一直線に並ぶ。


兄貴と心と3人で笑う時なんて‥もう来ないのかな?



「姫衣と千秋と3人で笑う時なんて‥もう来ないのかな?」

「え?」

「あ、なんとなく‥ね」



狭間に立つ者同士。

仮面に挟まれた者同士。



白と黒とがまっぷたつ。

キラキラ光る半分と
闇に飲まれた半分と。






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