ますかれーど
「「お帰りなさい」」



その言葉が、とても大切なものだと気づいたんだ。

たくさんのお土産と共に帰ってきたお父さんは、私と同じその蒼を細めて微笑んだ。



「ただいま」



お父さんが私の為に笑った顔。

出発の時に見て以来で。

少し恥ずかしくって
少し照れくさい。



「これ、心に」

「え?」



お父さんが、私の名前を呼んだ。


私の胸へと突きつけたのは、TOーKOUって書いてある化粧品の袋。

私がいつも使っている化粧品会社の袋。


お父さん‥知ってたの?



なんだかくすぐったくって

なんだかあったかくって



「ありがとう」



私はニッコリと笑顔を見せたんだ。

ーー‥なのに‥



「お前‥」



蒼を細め、訝しげに私を見るお父さん。



「ん?何?」

「いや、何でもない」



そう言いながらも、お父さんはじっと私の蒼から瞳を逸らさない。


まるで、私の瞳から何かを探るようにーー‥。



「蒼?明日は、優花のとこでパーティーだからね」

「‥あぁ」



すると、クッと少し力を入れて一瞥したお父さんは、私から瞳を離し、お母さんと一緒にリビングへと入っていった。




私が笑うと悲しそうな瞳をする。


麗花も会長も
お母さんも

そして

お父さんも。




仮面は砕けたはずなのに。

ワタシは私であるはずなのに。


向けられたその瞳の意味を

ついに理解することができずに

私は今、17回目の
誕生日を迎えます。






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