ますかれーど
青から橙に、橙から紫へと染まってゆく夕月夜。


秋を告げる乾いた風は、半袖ではもう寒い。



「心ー?行くよー」

「はーい」



週末の学校が終わり、1度帰ってきた私。



「ねぇお母さん」

「ん?」

「これ、着なきゃダメ?」

「ダメっ」



可愛く強く下されたお母さん命令。

私の誕生日パーティーなのは分かるんだけど、この服を着て歩くの嫌だ。



「心かわいい♪」



そう言って抱きつくお母さんは、大きなお腹の所為でやっぱり腕がまわってない訳で。

そんな所が可愛くて了承しちゃう私は、マザコン?

とか思ってみたりする。



すると、後ろからふわっと頭を撫でられた。

振り返れば‥


優しく微笑むお父さん。


お父さんは、スタスタと玄関まで行き、靴を履いて外へと出た。



「お父さんも、心が可愛いって言ってるのねっ♪」



そう言いながら自分も靴を履いて外に出たお母さん。

キラキラしたその顔は、眩しいくらいに可愛くて。

ふわふわ揺れる髪の毛が、猫みたいに可愛くて。


自分の母親を、こんなに可愛いと感じる娘は、やはりマザコンなのか‥?



「心ー?」

「あ、はーい!!」



私は、仕方なしにこの服のまま、外へと出る。




夕暮れに浮かぶ月。

3人で並んで、
ゆっくり ゆっくりと歩いた、初めての日。


忘れられない日。





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