ますかれーど
「「しーんーっ!!」」

「きゃーっ何々!?めっちゃ可愛いんだけどーっ」

「心!スッゴい似合うっ!!写真撮ろっ写真!!!」



紅澤家の庭に姿を見せた途端、走って抱きついて来た美女2人。



「優花、レイ、まずは何て言うの?」



その後ろから穏やかに笑う拓弥さんは、優花さんと麗花の頭をガシッとつかんで私から引き剥がした。



「「誕生日、おめでとうっ心♪」」

「おめでとう、心ちゃん」

「ありがとう♪」



毎年こうして2家族以上でお祝いしてくれる誕生日だけど、楽しいと思ったのは初めてだ。



「心ちゃん可愛い!それ似合ってるよ。なぁ、蒼?」

「あぁ」



お父さんが笑ってる。



「よく綺麗なまま残してあったねぇ。あの頃のみぃにそっくりだ」



嬉しそうに笑う優花さんや拓弥さん、お父さんやお母さん。



「そのワンピースはね、お母さんと優花が初めて音楽祭の王者になった時の、お母さんのステージ衣装なのよ♪」



真っ白なワンピース。いや、ドレス?

パフスリーブにぶわっと広がった、足首まであるスカート。

幾重にも重なったレースがふわふわしていて、すごく可愛い。



みーんなに

“おめでとう”って言われて、

“ありがとう”って返す1日。


みんなの笑顔が絶えない日。



忘れない。




ーーーーーーー‥





日も暮れ、群青色に染まった空。


ご飯はすごく美味しくて、恐ろしい程に大きい、豪華なケーキを、みんなで苦戦しながら食べ終える。


ケーキを作ってくれた金髪のおっきい人と、可愛らしいちっちゃな人にお礼を言うと、すぐにまた、フランスへと戻って行った。


この為だけに日本に戻ってたのかな?

だとしたら、ものすごく申し訳ない‥。



そんなことを思いながら、この庭のウッドテーブルに突っ伏していた私。

ガラス窓の中では、ワイワイガヤガヤと片付けや2次会が始まっていた。



その時、フッと辺りが暗くなる。


それは、夜を照らしていた下弦の月が、黒い雲に隠れてしまったから。



そんな空を、ぼーっと眺めてた。

あと数時間で今日が終わる。



今、会いたい人が2人居る。


そんなワガママな私に、自分で呆れた。




「なんでこんなトコに居んだ?お前はあれに参加しねぇの?」



ーー‥1人目。



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