ますかれーど
眉間にシワを寄せるその顔は、苦しそうでもあり、迷っているようにも見えた。


あなたは今、何を思っているの?


お互いに、お互いのココロが見えてない。

ワタシとアナタの仮面が邪魔をするの。



「何?急に大きな声出さないでよ」



あははって、ワタシ、ちゃんと笑えてる?



「‥んだよっなんなんだよっ」



何かを抑え込むように、声にも腕を掴んだ手にも更に力が入ったのが分かる。



「何が?」



平静を装い、笑顔を描く。

ワタシが被るのは、ピエロの仮面。



「なんでそんな顔してんだよ‥っ」



その並びの良い歯で、今にも下唇をかみ切ってしまいそう。



「そんな顔?どんな顔よ。いつも通りじゃない」


そう。いつも通り。
完璧に描いた笑顔に、落ち度なんてありはしない。



「お前はあいつと上手くいってる。それで幸せ。これで良いんだよなっ!?」



強く、とても強く、そして鋭く射抜くその眼差し。



「ーーっ」



なんでここで頷けない?なんでここで言葉が出ない?

真実じゃなく、虚実だから?

だからここで嘘はつけない?

ーーなんで?

笑顔も、言葉も、ここまで嘘をついてきて、今更なぜ「うん」の1つが言えないの!?



「頷けよっ!早く首を縦に振れよっ!!」



それでもワタシは動くことが出来なくてーー‥



「お願いだーー‥」



そんな、弱々しいお願いしないで。

わかんないよ。

あんたが、わかんないよーー‥っ!!



胸の前で手を握る。
強く強く強く強く‥

そして



「あんたには、関係のないことだよ」



瞳を細めて?
口の端を上げて?

暗がりでも、ハッキリと分かるくらいに‥笑って?


そう、関係ない。
あんたには、関係ないの。

あんたはもう、ワタシの知らないヒト。



だから、だからーー‥


近寄ってこないで。

そんな顔見せないで。

手を伸ばさないで。


ーー‥触れないで。





お願いだから




頬に触れたその長い指先で




また前みたいに


むにーって


伸ばして遊んでよ。




ねぇ、



ーーーー玄‥っ




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